不妊治療は大きく3段階に分かれます
タイミング法
タイミング法とは?
タイミング法とは、自然周期の排卵期を
①基礎体温表
②超音波検査
③排卵検査薬
などを用いて予測してタイミングを取ることで妊娠を目指す事をさします。基本的に3~6カ月継続して様子を見るのですが、妊娠の兆候が見られない場合は次のステップへ移行する事になります。
不妊治療専門病院に通院しながらタイミング法を取る場合は1周期の通院回数は2~3回と少なく、1~2日ずれて通院する事も可能である事からなかなか通院が難しい場合はタイミング法での妊活が1番取り組みやすいです。
また、体外受精などをお休みしている期間はタイミング法にステップダウンする事もあります。
タイミング法を勧められないパターンとは
タイミング法は結婚して半年~1年以内のご夫婦におすすめされる妊活ですが・・・
①卵管が狭窄もしくは閉塞している
②ご夫婦の年齢が高齢
③ホルモン値やご主人の精液検査に異常がある場合
④AMH(アンチミューラリアンホルモン)が低値
の場合はタイミング法を飛ばして次のステップ(人工授精や体外受精もしくは顕微授精)への移行を提案されることもあります。
また、排卵障害などがある場合はホルモン補充(投薬)によって卵を育てるサポートをしながらタイミングを取る場合もあり、排卵日が予測できない場合は不妊専門病院でのタイミング法がおすすめです。
次のステップへ移行のタイミングは?
半年経過しても月経予定日になると必ず月経が始まる方は自然妊娠の可能性が低いと予測されますので、人工授精もしくは体外受精などへのステップアップがおススメです。
その他、
「月経が来るたびに落ち込んでストレスになる」
「少しでも早く妊娠したいので効率の悪い妊活は嫌だ」
「夫婦共に多忙でなかなかタイミングを取るのが難しい」
というご夫婦は、2~3カ月タイミング法を試していきなり体外受精や顕微授精へとステップアップする事もよくあります。
特にご主人が出張や単身赴任で不在期間が長い場合は最初から「体外受精」を選ぶパターンも意外に多く、ご夫婦が心も体も無理なく妊活を出来るのであれば特にガイドラインなどのステップを気にする必要はありません。
人工授精(AIH)
人工授精とは?
人工授精とは、排卵時期に夫の精液を自宅もしくは病院内にて採精したのち胚培養士によって遠心分離機などを使い洗浄や濃縮をすることで、良質な精子のみを選別したものを医師が子宮内に注入することをいいます。
人工授精のメリット
人工授精とタイミング法の違いとは、
・精子を洗浄し質のいい精子を直接子宮内に挿入する
・精子が膣を通過せずに直接子宮に入る事で、免疫性不妊(過剰な免疫反応により精子が攻撃されること)を回避できる
・排卵のタイミングに人工授精することで精子と卵子が出会うチャンスを逃さない
などのメリットがあります。
特にメリットがあるのは「夫の精子の運動率や直進率などがあまり良好ではない」ご夫婦です。
というのも、卵子は自然排卵やタイミング法とほぼ同じ流れですので、免疫性以外の女性原因の不妊症にとっては大きな差が無いのですが、男性不妊の場合はメリットが大きい治療法と言えます。
人工授精が向かないパターンとは?
人工授精をするための大事な環境として・・・
「精子が卵管を通過して卵管采という、排卵した卵子が取り込まれる場所まで自力でたどり着くことが出来る」
という必須条件があります。
例えば卵管に水が溜まっていたり(卵管水腫)、卵管が狭くなっていたり(卵管狭窄)、卵管が癒着している場合(卵管閉塞)は精子が卵管采まで行く通路が塞がっているため精子と卵子が自然に出会うことが難しく、片方のみ塞がっている場合はもう片方が排卵するタイミングでは人工授精に挑戦する事が可能ですが両方塞がっている場合は残念ながら
「タイミング法」
「人工授精(AIH)」
の両方は不妊治療としては効果が期待できません。
ステップアップするタイミング
人工授精からステップアップする時期は、人工授精を繰り返しても妊娠の兆候が見られない場合(5~6回を目安にステップアップを検討する事が多いです)や、人工授精でホルモン剤を使う病院の場合、ホルモン療法を繰り返す事で卵巣の反応が悪くなったり内膜の厚みが薄くなるなどのデメリットが現れ始まることがあります。この「妊娠力が弱まった兆候」を感じている方は・・・
・一旦休憩し漢方や自然療法などでダメージを補修しながら妊娠力を見直してみる
・ステップアップをする事でダメージが大きくなる前に妊活のスピードアップを図る
という現状をなるべく繰り返さない努力が必要です。
体外受精(IVF)&顕微授精(ICSI)
体外受精と顕微授精について
体外受精と顕微授精はどちらも「ART」と呼ばれる「生殖補助医療」に分類されます。
ARTとは、タイミング法や人工授精を数回繰り返しても妊娠に至らないケースに適応される治療法で2022年からは年齢に応じた保険適応条件によって治療が行われるようになっています。
簡単に説明すると・・・
・卵子を卵巣内で成熟させた後、一度体外に取り出し(採卵)人工的に精子と授精させ、培養したものの中で受精卵(初期胚もしくは胚盤胞になるまで培養)まで育ったものを子宮内に戻す
といった過程を言います。
体外受精と顕微授精の違いとは?
体外受精と顕微授精の違いとは授精方法にあります。
体外受精は
「採卵した卵子をシャーレに置き、人工授精と同じく洗浄し濃縮した良い精子を振りかけて精子のチカラで自然受精させる」
事を言いますが、顕微授精は
「洗浄し濃縮した質の良い精子を選別したのちに特殊な針を使って顕微鏡下で卵子に針を刺し直接精子を注入する」
治療法です。この差は「質の良い精子を採取できたか?」によってどちらの授精方法を取るか医師が選択する事が殆どですが、
・採卵した卵子が少ない場合
・高齢不妊で確実に凍結卵(胚盤胞など)まで進めたい場合
は、精子の成績に関わらず正確性を求めて顕微授精を選ぶことが多いです。
体外受精や顕微授精のメリットとデメリット
体外受精や顕微授精はここ数年の間に医療としても急成長しており、患者さまにとってより良い治療や機器が数多く使用されるようになり、また以前のような強い副作用や痛みなどを伴う治療も減ってきているのが現状です。
さらに、保険適応になる事で金銭的な負担もかなり軽減されたため若いカップルにとっても希望が持てる医療になりました。
メリット
その中で、現状見受けられるメリットとしては・・
・妊娠までのスピード感が早く、また一度に複数の受精卵を得ることが出来るため第二子や第三子を希望する場合は凍結卵を保存する事で妊活時に採卵をせず移植からのスタートが可能になる。
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、自然妊娠だと排卵障害があり妊娠が難しい方が多いが、卵胞の数が多いためART治療をする場合は採卵数が普通の方よりも数多く、妊活には有利に働く可能性がある。
・ARTは「治療が検査でもある」と言われ、体外受精や顕微授精の過程をみることでどこに不妊症の原因があったのかを知ることが出来る。
デメリット
ART全般のデメリットとして・・・
・ARTにステップアップすると通院回数が多くなるため、正社員の場合などは仕事と不妊治療の両立が難しい。
・採卵で自己注射をしたり移植時に膣坐薬を挿入するなど患者さまの負担も大きいため、苦手な方にとっては慣れるまでの時間がかかる
・使うホルモン剤や麻酔薬が体質と合わない場合、悪心や体調不良になる事も(ごく少数ですが)あり
・体外受精の場合、ふりかけでの受精になるため場合によっては「受精不可」という結果が出るケースもあり。(医療機関によっては受精が難しいと判断した場合のみ途中から顕微授精に変更するケースもあり)
なお、過去には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になり、卵巣が腫れたり水が溜まるなどのケースもありましたが、最近の採卵法ではこのような負担が出にくいため大きなトラブルは起こりにくくなっています。
まとめ
最近では不妊治療を受ける方がとても多くなり、不妊専門病院を受診する事で赤ちゃんがすぐに出来るというイメージを持つ方も多いのですが、病院によっては原因が見つからないカップルでも初回から体外受精をスタートするように指導されてしまい急激なストレスにより余計妊活が難しくなってしまうケースも多いように感じています。
まずはしっかり検査をして自分の体調を知ったうえで、自分の体に合ったステップを踏むことでカラダや心に負担をかけ過ぎずに無理のない妊活をスタートする事が出来ます。
心と体は一体になっていますので、まずは心身を健康な状態に準備してから、
「自分に合った病院」
「自分に合った治療」
をしっかり選べるようにする事が大事です。
コメント